勝手に連載#3

散文休日記 出発編


「松井さん2連休予定だから!」そう会社の人の一言を信じ、1時間後出発する特急あずさのチケットを布団の中で買ってしまった。

なんとなく諏訪湖が見たくて、なんとなく気分が良くなりそうな場所へ行きたくて、チケットを買った。何も決めずとりあえずカメラと本と着替えをリュックに詰め込み、出発の電車に間に合わなそうな時間に家を出た。

出発3分前にチケットを発券、1分前にカフェラテとじゃがりこ(L)を購入。あり得ない朝食。長野の気温に合わせた服装は、完全に裏目に出て、滝汗の人間を乗せて発車した。

 

私は唐突に旅行するのが好きで、1人になった時間を知らない場所でたっぷり過ごすのが好きだ。歩く時間、電車に揺られる時間、コンビニへ行く時間。世界と自分という存在がポツリと人生ゲームのコマのように配置され、「私はここにいる」と別視点から自分を認識できる気がする。インターネットで誰が何をしているかやんわり分かる毎日に、物理的距離を離すことで得られる程よい孤独感が心地いい。

 

今、諏訪に向かうあずさでこの文を書いている訳だが、隣の人は「お世話になっております」から始まる文章を書いている。電車では3時間弱程、見知らぬ人と隣同士になる事があるが、この人にも人生があって今パチパチとメールを打っているんだなと、かたや私はじゃがりこをバリバリと詰め込み、カフェラテで流し込んでいて 人生…とこういう場面で思う事が沢山ある。

諏訪では夕焼けと朝焼けをみて、風呂に入ってゆっくりできれば…と思っている。隣の人はまだ「お世話になっております」の続きを書いているようだ。